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「稲作を中心とした市場志向型農業振興プロジェクト」

株式会社トロムソ

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 昨年の所報12月号「企業最前線」で訪問した重井町の(株)トロムソへ、(独)国際協力機構であるJICAからの依頼によりケニアから6名の研修生が訪れました。
 アフリカでは水田適地として開発可能な面積が8500万ヘクタールあるといわれていますが、実際に水田として開発されているのはその10分の1もありません。今回のプロジェクトで、米栽培技術や農業機械化の導入などにより、水田二毛作を全域で展開することを目指して活動を始めたところです。
035.jpg JICAボランティア事業は、国際協力の志を持った方々を開発途上国に派遣し、途上国の人々とともに生活し、異なる文化・習慣に溶け込みながら、途上国の抱える課題の解決に貢献する事業です。
 この度、JICAの協力による「稲作を中心とした市場志向型農業振興プロジェクト」の一貫として、稲作から出るもみがらの利活用方法を学びました。
 実際にグラインドミルを使ってモミガライトができるまでと、ロケットストーブでの活用方法を見学しました。プロジェクトマネージャーのDavid Njoguさんは、是非ケニアにもこの機械を持って帰りたいと大変興味を持たれていました。現在グラインドミルは国内でのみ販売を行っておりますが、橋本社長はこの技術を持ち帰って活用してもらうことを期待しますとのことでした。


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研修生に説明する橋本社長

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モミガライトの燃焼

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グラインドミル

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写真(タイトル下)説明

企業訪問   所報INNOSHIMA   2012年12月号




大震災後の日本への提言
「モミガライト利活用で地域エネルギー新時代を」
株式会社トロムソ 代表取締役 橋本俊隆

橋本俊隆氏

 東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故は、住民の生活や健康、地域経済などに甚大な被害をもたらした。復興への歩みの中で、政府はこれまでの原子力政策を検証しながら、新たなエネルギーの可能性を模索している。中でも、原子力に比べて安全でやさしい太陽光、風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーへの期待が大きい。

 そんな中、もみ殻を原料にしたモミガライトを生産する機械「グラインドミル」を製造販売している重井町の(株)トロムソに注目してみたい。

もみがら.jpg もみ殻は日本の稲作をベースにしたバイオマスでありながら、ほとんどが未利用の資源である。このエネルギー新時代にこそ必要な「地産地消エネルギー」として、その活用と普及を多くの方に知っていただきたい。


モミガライト・グラインドミルとは

エコ燃料.gif もみ殻固形燃料製造機械「グラインドミル」によって生産される固形燃料。もみ殻同士の圧密を利用してすりつぶし、それを固形燃料に形成する。モミガライトの燃焼カロリーは約4,000kカロリー/kgで、同じ重量の薪に比べて2倍の火力がある。用途に応じて長さを10cmから35cmまで調節することができ、ストーブを使用すれば10~15時間の持続性がある。約300度で加熱圧縮して形成、接着剤など添加物を使用していないため、燃焼時に硫化酸化物、窒素酸化物などの有害ガスを全く発生しない。モミガライトは着火すると薪のように燃え上がり、1時間ほどすると炭火のような「おき火」状態となる。


機械.jpg≪グラインドミルはトラックやフォークリフトなどを使い、もみ殻がある場所に移動して稼働させる。操作は1人で十分で、メンテナンスも簡単。


低コスト

 モミガライトの大きな特色は、他の燃料に比べて生産コストが低いことである。もみ殻は日本だけでも年間200万トンが発生し、さらにアジアをはじめ世界全体では1億トンも発生している。広島県でも発生量の3分の1に当たる1万2000トン以上が廃棄処分されている。以前であれば個々の農家が利用したり、焼却したりすることができたが、現在では処分にコストがかかる。モミガライトにして有効活用すれば、自家消費用にも収益目的の販売用にもなり大きなメリットになる。

活用方法

モミガライトの特性を生かす暖房器具として専用のストーブや、ドラム缶を利用した「ロケットストーブ」。もみ殻燃料は薪より長時間燃えるので、コンパクトなストーブでも威力を発揮する。燃料の自動供給などの機能を持った専用の暖房器が普及すればモミガライトの利用は大きく増加するだろう。

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▲薪(お風呂・レジャー用燃料)として

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▲ストーブ・ボイラーの燃料として

今後の展開

 日本に稲作があることで生まれるモミガライト。日本人にとって米は「食物」だけでなく、文化や精神的背景を持った特別なものである。そこには日本社会が直面している多くの問題、そして日本人が今何をなすべきかが浮かび上がってくる。

 モミガライトが利用される場面は電気やガスなど現在広く使われているエネルギーのすべての代替ではなく、一部を担うことを目指している。

 廃棄物焼却炉で使う次世代バイオ・リサイクル燃料「バイオコークス」の開発を進めているJFEエンジニアリング株式会社は、ジュースを搾ったリンゴの搾りかすを原料として、石炭コークスの一部をバイオコークスに置き換えて操業する実施試験を実施し、成果を上げた。研究チームは今後、代替率向上などを目指して研究を続け、来年1月からモミガライトをバイオコークスとして使う実験をする予定で、今後の展開に期待が膨らむ。

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企業最前線   所報INNOSHIMA   2011年12月号